【外装皮革】
ベイカー社製ロシアンカーフ
[ J&FJ Baker Russian Calf ]
　
2000年以上も前の皮革の製造、鞣しの製法を守り続けているベイカー社は、英国屈指の最後のタンニン鞣しのタンナーと呼ばれ、生み出される皮革の品質が非常に高いことでも有名です。
　
「ロシアンカーフ」は18世紀に帝政ロシアにて製造されていた皮革であり、トナカイの原皮を植物性のタンニンで鞣し、白樺から抽出した溶液で仕上げを施されております。
耐久性・撥水性に富む丈夫な素材のため、当時は国内での消費のほか交易の商品としても珍重されて西欧にも多く広まっていたそうです。
　
現在ではその技法や薬品、設備といったものが消失しており、ロシアンカーフは製造されていないため極めて少量が現存するのみとなっています。
　
今回SHEPARDの素材に用いたJ&FJ Baker Russian Calfは、元々某大手メゾンが前述の沈没船から引き揚げられたロシアンカーフを買い取り、ベイカー社（J&FJ Baker & Co Ltd）の協力を得て、長年の研究のもとロシアンカーフを再現した皮革です。
　
英国産の牡牛の原皮を用いて、オーク、ヤナギ、カバノキの樹皮から抽出した溶液を満たしたピット槽で14カ月という長い期間に渡り鞣しを行っており、最後にはカバノキの油やオイル、ワックスを調合した仕上げ剤にてフィニッシュされているそうです。
　
茶褐色の色味、皮革表面に型押しされた菱形の模様、そして独特な芳香がオリジナルのロシアンカーフの特徴と言われておりますが、ベイカーロシアンカーフもこれらの特徴を備えています。
濃淡の混ざり合った深みのある赤茶色はRussian Brownと名付けられ、本当に長年どこかで眠っていたかのようなアンティーク感と迫力が伝わって参ります。
　
この皮革から漂う香りは、一般的な皮革の匂いとは大きく異なり、木酢液やタール、ウィスキーのピート香などに近い香りが致します。
恐らくは仕上げに使用されるカバノキの油の成分がこの芳香の元かと思われます。
ご使用頂く中で徐々に抜けていくようですが、ロシアンカーフの大きな特徴と言える部分ですので、香りも含めお愉しみ頂けると幸いです。
　
　
　

【内装皮革】
Masure マシュア社　サドルプルアップ
　
マシュア社は1873年に創業したベジタブルタンニン鞣しを得意とするベルギーのタンナーです。
　
タンニン鞣しを用いて革を鞣し、革本来の表情を活かす製法が特徴です。
この皮革は、堅牢度、耐久性に非常に優れており、通常の皮革よりも多めにオイルをしみ込ませてあるので柔軟性にも富んでおります。
　
プルアップとは、皮革を折り曲げたり、引っ張ったりした時にオイルが繊維内を移動して表面の色が変わる「プルアップ効果」が名前の由来です。
成牛の肩（ショルダー）の部分を使い、繊維密度が高くコシが非常に強いのが特徴で、透明感のある光沢は使い込むことで更に増し、徐々に馴染んで自分だけのものに変化していきます。